導入実績

Case

JCOM株式会社

地域の暮らしを支える社会インフラ企業として、2030年度カーボンニュートラル達成へー 再生可能エネルギー調達・TCFD/TNFD情報開示を支援

  • 再生可能エネルギー調達
  • TCFD/TNFD情報開示

テレビ、インターネット、モバイルなどの放送・通信サービスをはじめ、電力・ガスなどの生活インフラを支えるケーブル・プラットフォーム事業、地域DXなどを推進するソリューション事業、メディア・エンタテインメント事業、通販事業と幅広い事業を展開するJCOM株式会社(以下、J:COM)。同社は、全国に放送・通信設備を有する社会インフラ企業として、24時間365日安定したサービス提供を継続しながら、環境・社会の持続可能性と事業の持続的成長の両立に向け、サステナビリティ経営を推進している。
同社は、マテリアリティ(重要課題)の一つに「地球環境への貢献」を掲げ、より具体化したサブマテリアリティとして「脱炭素社会の実現への挑戦」を設定し、カーボンニュートラル達成に向けて省エネルギー施策と再生可能エネルギー施策の両輪で取り組みを推進している。特に、ヘッドエンドや伝送路など全国に敷設したインフラにおける電力使用がGHG排出の大半を占めることから、設備の省エネに加え、エリアごとの設備特性や電力需要を踏まえた再生可能エネルギー調達の計画・実行が重要なテーマとなっていた。また、サブマテリアリティの「資源の有効活用」「自然環境負荷の低減」を含めた「地球環境への貢献」の取り組みを一体で推進していくためには、気候変動や自然資本に関する事業リスク・機会を網羅的に特定・評価することも必要であった。

 

GXコンシェルジュはJ:COMに対して、2030年度カーボンニュートラル達成に向けた再生可能エネルギー調達、およびTCFD/TNFDに基づく気候・自然関連リスクと機会の分析・開示を支援。今回、サステナビリティ経営推進を担う担当者に、プロジェクト開始前の課題、支援の内容、得られた成果、今後の展望について話を伺った。

JCOM株式会社

JCOM株式会社 サステナビリティ推進部 ご担当者(写真左から、和泉部長、藤野氏、川畑グループリーダー、菊原グループリーダー)

JCOM株式会社

経営企画部門 サステナビリティ経営推進室 サステナビリティ推進部(※組織・役職は取材時点)

部長 和泉 克典
環境推進グループリーダー 菊原 祐一
開示推進グループリーダー 川畑 浩大
環境推進グループ 藤野 のぞみ
  • 放送・通信
課題
  • 再生可能エネルギー調達
    2030年度カーボンニュートラル達成に向け、再生可能エネルギー調達計画の実行性を高める必要があった。全国に分散する放送・通信インフラの電力需要に対し、各エリアの設備特性を踏まえた最適な調達方法を検討することが課題だった。
  • TCFD/TNFD情報開示
    気候変動をはじめとした自然環境が、事業活動に与える影響を統合的・網羅的に把握し、経営戦略やリスク管理、事業機会の創出、情報開示につなげる必要があった。
支援概要
  • 再生可能エネルギー調達支援
    調達方針の整理からRFP設計、事業者提案の比較、事業者との協議、社内説明に必要な論点整理まで一貫して支援。
  • TCFD/TNFD情報開示支援
    事業活動と気候変動や自然資本との接点の洗い出し、シナリオ分析を踏まえたリスク・機会の特定および財務影響評価、各事業部の取り組み推進に向けた対応策の整理を包括的に支援。
成果
  • 再生可能エネルギー調達
    北海道・東日本・西日本の各エリアで、パートナー事業者や調達手法を組み合わせた分散型調達モデルを確立。
  • TCFD/TNFD情報開示
    気候変動と自然資本に関するリスク・機会と対応策を部門横断で体系的に整理し、TCFD/TNFD提言を参照した一体的な開示を実施。

課題

社会インフラとしての責任と、2030年度カーボンニュートラル達成への道筋

 

J:COMは、放送・通信設備を全国で運用する社会インフラ企業として、24時間365日安定したサービス提供を継続しながら、カーボンニュートラルに取り組む責任があると考えている。災害時にも必要な情報が届くこと、日々の通信が安定して使えること、在宅勤務やオンラインミーティングが滞りなく行えること。同社にとってカーボンニュートラルは、単なる環境目標ではなく、地域の暮らしや「つながる安心」を将来にわたって支えるための基盤づくりでもある。

 

J:COM202312月にサステナビリティ経営方針を策定し、「暮らし」「地域社会」「地球環境」「人」の4つの領域でマテリアリティとサブマテリアリティを設定し、事業活動を通じた社会課題の解決と企業価値向上を目指している。サステナビリティを経営や事業戦略の中に組み込み、中期経営計画と一体で実行していくことが、方針策定の背景にあった。

 

一方で、2030年度カーボンニュートラル達成に向けては、目標を実行性のある計画へ落とし込む必要があった。J:COMGHG排出は、ヘッドエンドや伝送路など全国の放送・通信インフラにおける電力使用が大きな割合を占めている。そのため、安定したサービス提供を維持しながら、設備の省エネを推進すると同時に、全国に分散する設備の電力需要に対し、各エリアの設備特性に応じた再生可能エネルギー調達を進めることが重要な課題だった。

 

再生可能エネルギー調達には、フィジカルPPA、バーチャルPPA、再エネメニューなど複数の選択肢がある。加えて、価格変動リスク、供給安定性、環境価値の確保、追加性、契約期間など、検討すべき論点は多岐にわたる。「社内だけでは比較軸の整理や将来コストの見通し、調達設計、事業者比較を短期間で精緻に進めることが難しいという課題があった。」と和泉部長は振り返る。

 

気候変動と自然資本を一体で捉え、事業への影響を可視化する必要性

 

TCFD/TNFD開示対応においては、これまでマテリアリティや環境方針、カーボンニュートラル目標を策定し、設備の省エネや端末機器のリサイクル、環境問題の情報発信等の取り組みを推進していたものの、気候変動や自然資本が各事業に具体的にどのようなリスク・機会をもたらすのか、定量・定性の両面で十分に可視化できていなかったという。

 

特にJ:COMは、放送・通信、メディア・エンタメ、テレビ通販など、幅広い事業活動を展開している。気候変動と自然資本がそれぞれの事業活動やサービスに影響することに加え、相互に影響し合うことを踏まえると、TCFDTNFDを個別に対応するのではなく、統合的に捉える必要があった。関係部署と連携しながら、リスクと機会を客観的かつ体系的に整理し、経営戦略や情報開示につなげることが求められていた。

JCOM株式会社 和泉部長、藤野氏

支援概要

再エネ調達の複雑な論点を、社内で判断できる形へ整理

 

再生可能エネルギーの調達では、環境価値の確保だけでなく、電力市場や制度動向、契約条件、コスト、供給安定性を総合的に考慮する必要があり、J:COMは設備特性やエリアごとの電力需要を踏まえて長期的な調達方針を検討できるパートナーを求めていた。

 

選定の決め手となったのは、GXコンシェルジュが単なるアドバイザーではなく、J:COMの課題を踏まえて実務を一緒に進めるパートナーであると感じられた点だった。「提案段階で、最も実現したいことを実行してくれそうだと感じた。発電・小売事業者への理解も深く、任せて安心だと思えた。」と菊原グループリーダーは語る。

 

GXコンシェルジュは、J:COMの再生可能エネルギー調達において、調達方針の整理、RFP設計、事業者との協議、社内説明に必要な論点整理まで、実務に踏み込んだ支援を行った。再エネ調達は需要家側の論理だけでなく、発電・小売事業者を含む上流側の事情も踏まえて落としどころを考える必要がある。「GXコンシェルジュは需要家と発電・小売事業者の両者目線での専門知見があり、多角的な観点からの助言により、納得感を持って意思決定を進めることができた。」と和泉部長は振り返る。

 

支援の中で特に印象に残ったのは、複雑な再エネ調達の論点を、社内で議論・判断できる形に「翻訳」したことだった。制度や市場の専門性だけでなく、RFPで何を確認すべきか、事業者提案をどう比較するか、社内説明でどの論点を押さえるべきかまで、実務に即して整理。RFPの内容は非常に具体的で分かりやすく、提案依頼先の事業者からも「何を求められているのかが明確で回答しやすかった」と評価されたという。

 

TCFD/TNFDを、J:COMの事業構造に即して統合的に分析

 

TCFD/TNFD開示対応では、J:COMの事業活動に関わる気候・自然関連のリスクと機会を分析。TCFDとTNFDの提言を参照しながら、気候変動と自然資本を統合的に捉え、シナリオ分析、主要なリスク・機会の特定、事業への影響評価、対応策の整理から開示まで一貫して支援を実施した。

 

プロジェクトで大変だったのは、気候・自然関連のリスクを、J:COMの実際の事業や各部署の業務に結びつけて具体化することだった。エネルギー価格、設備投資、自然災害、空調コスト、屋外作業、物流、環境貢献サービスなど、論点は幅広い。関係部署と確認しながら、現実的な対応策へ落とし込む必要があった。

 

GXコンシェルジュは、フレームワークの要求事項をそのまま当てはめるのではなく、J:COMの事業構造に合わせて、どこを深掘りし、どこを今後の課題として整理するかを一緒に検討した。リスク・機会の抽出から、社内ヒアリング、事業インパクト評価、対応策の整理まで一貫して支援したことで、社内関係者の納得感を醸成しながらプロジェクトを進めることができた。

 

J:COMは通信や放送など、さまざまな事業を手がけていることが特色だ。気候変動や自然資本に関する豊富な知見に加え、多様な企業への支援実績を有するGXコンシェルジュに伴走していただくことで、それぞれのサービスや業務の特性を踏まえたリスク・機会の特定や事業へのインパクト評価を、より客観的かつ実効性の高い形で進めることができた。」と川畑グループリーダーは振り返る。


JCOM株式会社 菊原グループリーダー、川畑グループリーダー

成果

2030年度を通過点に、環境価値と事業価値の両立へ

 

再生可能エネルギー調達支援を通じて、J:COMは全国の電力需要を北海道・東日本・西日本に分け、各エリアの設備特性や需要予測に応じて、パートナー事業者や調達手法を組み合わせる分散型調達モデルを確立した。多様な手法を組み合わせることで、供給の安定性と環境価値の確保を両立し、長期的にも電力需要や価格変動に柔軟に対応可能な調達スキームを実現した。

 

TCFD/TNFD開示では、気候変動と自然資本との関係を、事業への影響、リスク管理、対応策、指標・目標と一体で整理し、コーポレートサイトでの開示を実現。また、納得感のある分析内容をもとにリスクや機会、事業インパクトや対応策について部門横断で議論したことで、全社の環境に対するリテラシーと意識の向上につながった。環境課題は、事業リスクの管理や新たな機会創出につながるテーマであるという認識が社内で共有されたと同時に、これまで推進してきた取り組みの意義や目的を再認識することができた。

 

「部門横断で議論することで、その部門ならではの発見があった。環境課題を各部門の業務や事業リスクと結びつけて捉えるきっかけになったと感じている。」と藤野氏は振り返る。

 

J:COM社内では、2030年度カーボンニュートラル達成に向けた道筋が具体化したことで、環境施策を自分たちの業務や事業戦略と結びつけて捉えるきっかけになった。さらに、営業部署など各部門においても、サステナビリティの取り組みを会社全体の方針として捉え直す機会となったという。和泉部長は、「リスクと機会を体系的に全社目線で整理できたことは、施策の意義を再認識し新規施策を進める上で、非常に重要であった。」と語る。今回の取り組みは、J:COM社内のサステナビリティ経営に貢献する取り組みを表彰する「サステナビリティ・アクション・アワード」で優秀賞を受賞しており、経営からも高く評価されている。

 

今後、J:COMは策定・開示した内容を着実に実行へ移していく段階に入る。再生可能エネルギー調達については、エリアごとの導入を進めながら、需要や市場環境、規制の変化にも柔軟に対応していく必要がある。TCFD/TNFDについては、分析対象の拡大や指標・目標のモニタリングを通じて、リスク管理と事業戦略への反映をさらに深めていく方針だ。

 

J:COMは地域社会と共に歩む企業として、放送・通信事業をはじめとする多彩なサービスを通じて、脱炭素だけでなく、自然資本や循環型社会の観点も含め、持続可能な地球環境と社会の実現を目指している。

 

2030年度カーボンニュートラル達成を一つの通過点としながら、地域の暮らしを支える社会インフラ企業として、環境・社会課題の解決と企業価値向上の両立に挑戦し続けていく。

 

J:COMTCFDTNFD提言への対応」公開ページ
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J:COM「再生可能エネルギーの分散型調達モデル確立」に関するニュースリリース
J:COMグループ「2030年度カーボンニュートラル達成」に向け再生可能エネルギーの分散型調達モデルを確立 -エリアごとのパートナーと連携し、柔軟で持続可能な調達を実現-| ニュースリリース | JCOM株式会社 | J:COM

 

J:COMGXコンシェルジュの担当者(写真上段左から:GXコンシェルジュ 寺崎、J:COM 和泉部長、川畑グループリーダー、菊原グループリーダー 下段左から:GXコンシェルジュ 林、J:COM 藤野氏、GXコンシェルジュ 竹本)