導入実績
Case
住友重機械工業株式会社
脱炭素・生物多様性の取り組み推進に向けて ー TNFD開示・SBT認定取得を支援
- SBT認定取得
- TNFD情報開示
持続可能な社会の実現のために、社会価値と企業価値の向上を両輪として企業経営を行う住友重機械工業株式会社は、2025年6月にTNFD(自然関連財務情報開示タスクフォース)提言に基づく一部情報を開示、2026年2月には温室効果ガス排出量削減目標についてSBT(Science Based Targets)認定を取得した。
多岐にわたる事業を展開し、グローバルに広がるサプライチェーンを有する同社にとって、国内外連結子会社を含むサプライチェーン排出量の報告が求められるSBT申請は、多くの課題と向き合うプロセスとなった。
今回GXコンシェルジュが伴走支援を行った両プロジェクト推進のポイントや、サステナビリティを経営へ統合していく今後の展望について、担当者にお話を伺った。
住友重機械工業株式会社 ご担当者(写真左から:吉田氏、川井氏、本藤氏、小川氏、坂巻氏、関口氏)
- 課題
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投資家との対話の中で、国際イニシアティブに沿った環境負荷低減への道筋を提示することが求められていた。
- TNFD:開示本格化に向けて、経営層から現場まで社内連携の土台づくりが必要だった。
- SBT:申請に向けて、報告すべき排出量の粒度の理解および未算定を含む追加算定が必要な場合について算定ロジックの構築が必要だった。
- 支援概要
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- TNFDアドバイザリー支援
評価ツールによる分析結果を起点に、重要なリスク地域を洗い出し、実態を確認する拠点調査を通じて自然関連リスクの深掘りを実施。分析・調査内容を踏まえてTNFD提言に沿った開示情報の作成アドバイザリーを実施。合わせて経営層向けに自然関連リスク分析の結果報告会も行った。
- SBT認定取得支援
SBT認定取得に向けて、全連結子会社のGHG総排出量算定や申請内容の検討、審査機関からの質疑応答対応を一貫して支援。
- TNFDアドバイザリー支援
- 成果
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- TNFD:統合報告書2025での初開示に先駆けて、経営層向け報告会を実施し、全社的なGX意識の醸成につながる土台を形成。
- SBT:2030年までの短期目標の認定を取得。外部評価の基盤を確立。
課題
投資家からの強い要請と、TNFD初開示・SBT認定取得実現の壁
住友重機械工業では1990年代から、環境管理部を中心にデータ収集や環境マネジメントに継続して取り組んできた。「2019年度にはサステナビリティ情報の積極的な外部開示(TCFD賛同)を社内で検討したが、当時はまだタイミングを見極める段階だという判断になった」と、環境管理部の本藤部長は振り返る。

住友重機械工業株式会社 環境管理部 本藤部長
その後、投資家との対話を通じてイニシアティブ等への要請が強まる中で、TNFD開示とSBT認定取得への対応の必要性が一段と高まっていった。サステナビリティ推進部の坂巻部長は、「当社はボイラーなどCO2を排出する製品を開発・販売しているため、投資家から環境負荷低減の観点で排出量削減に向けた取り組みを注視されやすい。その分、負荷低減に向けた道筋をどう示すかが強く問われている」と課題感を説明する。
そのうえで「投資家から継続的にTNFD開示への関心が寄せられたことを受け、今回開示に取り組む方針を固めた。また、将来的な環境負荷低減へのコミットメントを明確にする枠組みとして、SBT認定への期待は大きかった」と語る。
TNFDにおいては、事業活動と自然の接点(依存・影響)を把握した上で、自然関連リスクを分析し開示することが求められているが、TNFD提言の公表から間もない時期であり、開示内容の検討は手探りの状態からスタートした。加えて、早期にリスクを開示する意義と必要性について、社内の理解を得ることにも苦労していた。
SBT認定取得を進める上で大きな壁となったのが、未算定排出量の算定であった。目標基準年(2019年)における全連結子会社を含むスコープ3排出量を遡って算定する必要があったが、算定に必要なデータが完全には揃っていなかった。この状況においてどのように算定すべきか具体的な方法がわからず、解決方法が見えない状況にあった。
支援概要
SBT認定取得・TNFD初開示まで状況に寄り添い伴走支援
GXコンシェルジュに支援を依頼することにした決め手は、未算定排出量の算定に関する丁寧な説明とサポート体制だった。「SBT認定取得に向けて未算定排出量をどのように算定するか、具体的な手法を提示して一緒に進めてくれる点が非常に安心できた。これならいける、という手応えを持てたのが一番大きかった」とサステナビリティ推進部の小川主査。
「どの部署がどのデータを保有しているか」を抜け漏れなく整理し、窓口を一本化して密に連携することで申請までのプロジェクトはスムーズに進行したが、山場となったのがSBT審査機関との膨大な質疑応答だった。多様な事業を持つことに加え、グローバルに展開する同社に対しては、審査側から求められる確認範囲も必然的に広がる。質問が相次ぐ状況に対し小川主査は、「乗り越えるのが難しいのではないかと思う局面でも、GXコンシェルジュはデータの背景や裏にある事情まで汲み取りながら一緒に考え、審査機関に理解いただく論理的な回答を組み立ててくれた。GXコンシェルジュの柔軟で手厚い支援がなければ認定取得はできなかった」と振り返る。

住友重機械工業株式会社 サステナビリティ推進部 小川主査、坂巻部長、関口主査
また、自然関連リスクの分析については、ツールを用いたリスク評価だけではなく、その結果をもとに実際に製造拠点との対話を通じたリスクの深掘りを実施した。製造拠点へのヒアリングでは、その必要性や普段の環境監査とは異なる観点を現場にも理解してもらえるよう、ヒアリング項目の設計を中心とした対応を全面的に支援。「外部主催のTNFD開示に関するセミナーにも参加したが、拠点ヒアリングによる深堀調査について説明がなかった。評価ツールではリスクが高いと見られる項目でも、現場を確認すると高リスクではないと判断できたケースがあった。また、現場への事前調査とヒアリングを通じて、サステナビリティの観点で現場・事業を改めて捉えるきっかけにもなった」と、両部の担当者は手応えを口にする。
コンサルティングを担当したGXコンシェルジュの小澤も「評価ツールでリスクを把握するだけで終わらせず、スクリーニングして深掘りし、リスクを正しく見極めることが重要」と強調した。

住友重機械工業株式会社 環境管理部 吉田主査、川井主査、本藤部長
成果
開示達成とノウハウ蓄積。「サステナビリティ=経営」の浸透へ
いくつものハードルを乗り越え、同社はTNFDの開示とSBT認定取得を実現した。投資家からも前向きな反応が得られているという。
さらには経営層向けにTNFD開示に関する報告会を実施し、GXコンシェルジュが説明を行ったことで、TNFDは単にリスクを開示するための枠組みではないという点への理解が深まった手応えがある。
TNFDの次フェーズとしては、サプライヤーへのアンケートなどを通じて、生物多様性に関する検討をサプライチェーン上流まで段階的に拡大していく方針だ。SBTについても、掲げた目標の達成に向けてGHG削減の取り組みを進めるとともに、スコープ3を含む国内外のデータ管理の仕組みづくりを強化していく。
「これまではサステナビリティがCSRや環境課題に限定して捉えられ、特定部署が担うものと見られがちだった。今後は、“サステナビリティは経営そのもの”という考え方を社内に浸透させていくことが必要で、企業戦略を考えていくきっかけにもなると良い」と、サステナビリティ推進部の関口主査は展望を述べる。
次なるSSBJ(Sustainability Standards Board of Japan:サステナビリティ基準委員会)基準に基づく開示への対応も見据えながら、全社的な経営戦略としてのサステナビリティ推進に挑み続ける。

住友重機械工業・GXコンシェルジュの担当者(写真上段左から:GXコンシェルジュ 寺崎、住友重機械工業 吉田氏、本藤氏、小川氏、GXコンシェルジュ 竹本 下段左から:GXコンシェルジュ 小澤、住友重機械工業 川井氏、関口氏、坂巻氏)