導入実績
Case
能美防災株式会社
TCFD開示・CDP回答初対応―顧客に寄り添ったGX伴走支援
- TCFD情報開示
- CDP回答
能美防災株式会社は、火災報知設備や消火システムなどの防災製品の開発・設計・製造・販売・施工・保守を手がける防災のリーディングカンパニー。社会の安全・安心を守る使命のもと、公共施設や商業施設、インフラなど多様な分野で防災ソリューションを提供している。近年では、GX(グリーントランスフォーメーション)を重要課題と捉え、TCFD開示やCDP回答、再エネ導入などを通じて、環境と調和する企業経営を推進。防災と環境を両立させる新たな価値創造に挑み、持続可能な社会の実現に貢献している。
今回は、GXの取り組みを牽引する総務部サステナビリティ推進グループ長の小野田氏、主事の髙橋氏、株式IRグループ長の小川氏に、GX推進の背景や起点、そしてGXコンシェルジュとの取り組みについてお話を伺った。

能美防災・GXコンシェルジュの担当者(写真左から:GXコンシェルジュ 寺崎、佐藤、能美防災 小野田氏、髙橋氏、小川氏)
- 課題
-
初めてのTCFD開示対応、CDP回答にあたり、背景の理解から対応方針の検討、対応ステップの整理、社内体制の構築など
- 支援概要
-
- TCFD開示の初期対応から、開示文案の作成、最終報告会の支援までを一貫してサポート
- CDP初回答に向けた質問内容の解釈、目標スコア獲得方法のアドバイス、記述文案のレビューまで伴走支援
- 成果
-
- TCFDの初開示。社内の役員向け報告会も実施し、全社的なGX意識の醸成につながる土台を形成
- CDP初回答において、目標スコアである「B」を獲得。外部評価の基盤を確立
- 今後のスコープ3算定やSSBJ対応への布石を構築
課題
初めてのTCFD・CDP対応に向けた情報整理
脱炭素社会への関心が高まる中、能美防災株式会社ではマテリアリティの1つとして「カーボンニュートラル実現をはじめとする地球環境保全への取組み」を掲げ、サステナビリティ方針の策定やガバナンス体制の整備等を行った。2023年4月にはサステナビリティ推進グループを新設し、企業としての環境対応強化に向けた取り組みを開始した。
まず大きな壁となったのが、東証プライム市場上場企業に対して対応が求められているTCFDへの対応だった。主に旗振り役となったのは、当時サステナビリティ推進グループ長を務めていた小川氏。グループ新設前から、社内でサステナビリティ推進の議論を主導し、マテリアリティの特定や委員会体制の整備、GXに係る課題の優先順位付けなどに取り組んできた。
しかしTCFD特有の“気候変動シナリオ分析”や“リスク・機会の将来予測”、“財務影響の定量インパクトの開示”といった要件に対し、会社としての対応前例や知見がなく、戸惑いが先に立ったという。
「気候変動による財務インパクトを算出するには仮定や前提が必要になる。その前提をどこから持ってくるのか、そもそも何を前提にすべきかも分からなかった」と小川氏は振り返る。
さらに、「出した数値や分析内容に対し、経営層からその妥当性を問われる場面もあり、正解が見えない中で社内を説得する難しさを痛感した」と小川氏は語る。
能美防災株式会社 小川氏
一方、CDP対応を担当した小野田氏も、「ガイダンスなどが英語」「設問の意図の解釈が難しい」「過去回答の蓄積なし」という“三重苦 のなか、初めての回答に臨んだ。
「目標は Bスコア でしたが、自社が持っているGHG排出量データ等の情報を活用して、どのように回答すれば目標に届くのかも分からず、本当にゼロからのスタートでした」と小野田氏は振り返る。
支援概要
初めてのTCFD情報開示・CDP回答に向けた一気通貫サポート
GXコンシェルジュでは、TCFDおよびCDP対応を行う上で、社内の体制づくり・情報整理から、記述内容の作成・レビュー、経営層向けの報告会まで、多岐にわたり支援をさせていただいた。
TCFD対応においては、社内ワーキング体制の構築や部門間の情報収集支援に加え、経営層向けの報告資料作成やプレゼンテーションもサポート。最終的には会長・社長を含む役員全員にしっかりと内容を理解いただくことができ、全社的なGX意識醸成につながった。
「算出した財務インパクトの根拠を問われた際には、GXコンシェルジュから教えてもらった他社事例や業界動向を示して回答できたことで理解度の向上や納得感に繋がったと思う」と小川氏は語る。
CDP回答では、設問意図の解釈、英語原文の翻訳、回答方針の検討から記述内容のレビューまで実務全般をサポート。初めての回答という状況において、目標スコア「B」の取得に向けて、既に持っている情報を活用した戦略的な回答方法や今後のスコアアップに必要な施策提案もさせていただいた。
「質問の背景や意味から丁寧に説明してもらえて、本当に助かった。ポータルサイトの操作方法やトラブル発生時の対応、社内関係者への説明資料作成などの細部にまで寄り添った支援、またレスポンスも早く密に連携がとれたことも安心感に繋がった。」と小野田氏は語る。
能美防災株式会社 小野田氏
成果
開示対応による外部評価の獲得とさらなるGX推進に向けた基盤構築
TCFDについては、気候変動が事業にもたらすリスクと機会を定量・定性の両面から丁寧に整理し、財務インパクトまで踏み込んで開示したことが、大きな信頼獲得につながった。会長・社長を含む役員層に向けた報告会も実施し、社内のGX意識の醸成と経営層の理解促進を同時に実現した。
「本当にこれで良いのかと不安を抱えながら始めたが、最終的にはちゃんと取り組めていると自信を持って言える内容になった。社内外に対して、GXに真剣に向き合っている印象を与えられたのではないか」とTCFD対応を主導した小川氏は語る。
CDPについても、初めての回答ながら、目標スコア「B」を獲得。設問の意図や回答方針を一つひとつ丁寧に検討し、自社の実態と合致した形での記述を積み重ねることで、投資家や関係先からの評価につながる開示が実現した。
「分からないことばかりの中で、“どう回答すれば伝わるのか”を一緒に考え抜いた結果、納得感のある内容になった。CDPでしっかりスコアを取れたことは、社内にも手応えを与えたと思う」と小野田氏は語る。
守りと攻め、両面からのGX推進へ
GHG排出量の算定や削減をはじめとするGX取組みは着実に進んでいるものの、まだまだ社内の情報は散財しており、スコープ3やSSBJ対応に向けたはこれからとのこと。
「限られたリソースの中で、優先順位を明確にしながら着実に取り組み、社内の情報整理や交通整理が重要である」と髙橋氏は語る。
能美防災株式会社 髙橋氏
一方で、「防災と環境は本来相反するものではなく、むしろ新しい価値を生み出せる関係にある」と語るのは小川氏。「GXを“守り”の対応に留めるのではなく、当社の強みである防災技術を活かし、“攻め”のGXとして新たな製品・サービス開発にもつなげていきたい」と意欲を見せる。
能美テクノスペース市ケ谷に展示されている製品
GXコンシェルジュは、GXへの取組みを強化しようとする能美防災株式会社の意向に寄り添い、同社自ら納得し得る形での社内体制整備や情報開示を支援し、結果として社内外からの信頼や評価に繋がる開示の実現を後押しさせていただいた。
今後もGXコンシェルジュは、企業が直面するGX推進のさまざまな課題に寄り添い、コンサルティングから実行支援まで一貫した伴走で、企業価値向上を後押ししていく。